好きなことを売りにした「音楽家のための宿」

こんにちは、一級建築士の牧野直子です。

「好きなこと」
「求められていること」
「自分ができること」

ここを意識して、サービスを作っていくといいですよね。

好きを仕事にするということ。

好きを仕事にする。
それが仕事になったら、もちろんいいけど、誰もがサッカー選手やアイドルになれるわけではありません。

じゃあ、なれなかった人はあきらめるべき?
仕事は仕事、趣味は趣味、、と割り切るべき?

高みを目指すには、割り切らないほうがいいんです。

私が旅館リニューアルの店舗設計と企画をさせていただいた、千住田村屋さんを紹介します。

好きを仕事にいかした旅館

ご主人の田村安志さんは、音楽が好きでフォークソングを自ら作詞作曲して、毎月、小さなライブハウスでライブをする方。

でも、音楽はあくまで趣味の範囲でした。

そんな田村さんが、ご両親が運営されていた旅館を世代交代するために、築60年の古い木造旅館を耐震補強とともに、リノベーションすることになりました。

もともとは、旅館とはいっても、ほとんどが生活保護の方の住まい。
耐震補強はいずれ必要。しかし、耐震補強をしてリニューアルをしたら、観光客の方向けにシフトチェンジしないといけない。
そこで、田村さんとヒアリングを重ね、「田村さんの好きを旅館の売りにしましょう!」ということで、防音室を旅館内に作ることにしたのです。

実は、ご両親は最初、お前が欲しいからって無理矢理作るのはどうだろう?ってかなり消極的、というか反対されていたそうなんです。

でも、絶対ウケるはずです!と私が応援して、防音室作りは始まりました。

そんなこんなで、防音室付の旅館が完成。

でも、広告宣伝費をかけられなかったこともあり、リニューアルしてすぐは、「防音室を使ってくれるお客さんがいない、、」と悩まれていました。

でもめげずに、お客様には全員、うちにはこんなすごい防音室があるんですよ、と必ず接客されたそうです。

徐々に噂が広まる

すると、最初はリニューアルしたばかりでキレイで安い宿と思って予約した方が、実は、趣味が管楽器で、今度は、楽器を持って泊まりにきます!と言って、本当に泊まりに来てくださったそうです。

そんな人が一人、二人増え、、徐々に噂が広まっていきます。

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防音室がある旅館

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古い旅館を音楽好きのための旅館にリノベーションしました

先日、訪れた際は、オープンして1年半、ちょうど受験シーズン後だったのですが、当初の期待どおり、 音大受験の方たちが、防音室の取り合いになるぐらい大盛況だったとのことです。

また、それを話してくれる田村さんも、本当にうれしそう!

音楽が好きな方が好きを仕事にするのは、ミュージシャンになることがすべてじゃないですよね。ミュージシャンを育てる、ミュージシャンのためのサービスをする、それもその立派な仕事。

そして、劇団員やミュージシャンが泊まれる場所で、練習ができる場所が少ないから、望まれているわけです。

「好きなこと」で、「望まれていること」。

あとは、 それを可能にする環境があればいい

田村さんが、できること = 好きな音楽を売りにした旅館を運営すること

だったわけです。

私も、好きを前面に出してイキイキされているご主人を見ることができて、とても嬉しいです。

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牧野 直子

一級建築士。 店舗、オフィス、福祉施設を主に設計しています。マーケティングとデザインが大好き。バレーボールとダイエット料理が趣味です。